「ほんの少しの行動力で誰でも変わることはできる」「単に肉体を鍛えるのではなく、格闘技を取り入れた真の強さを目指すことで精神的にも強くなれる」そう語るのは鴇 稔之(とき としゆき)氏だ。鴇氏はキックボクシング世界チャンピオンや日本チャンピオンを18名も育て上げ、現在は一般社団法人日本ムエタイ協会の代表を務めている。同協会が運営する格闘スクール「KICK BOX」においては、ひきこもりや登校拒否の子供、社会人、学校教員の受け入れと社会復帰に向けたサポートを行うという。そこで疑問が沸いてくる。ひきこもりが格闘スクールに通ったところで改善するのだろうか?そもそも、どこかへ出かけたり、運動なんかしたく無いというのが本音ではないか?
実は、ひきこもりの場合「運動したくない」というより「運動ができない」が多いのだそうだ。例えば、何かをきっかけに家に引きこもりがちになるとする。当然ながら1日の大半を家の中で過ごすことになる訳だから日常生活は急激に非活動的になる。つまり運動不足だ。中には運動不足からくる腰痛や関節の痛みなどが表れる人もいる。厚生労働省の「身体活動・運動」によると、このような生活が続くことが精神的および社会的な生活機能をも低下させる大きな要因となるのだそうだ。ひきこもりと聞けば始めから非活動的であったような錯覚を受けるが、実の所、ひきこもり生活が人を非活動的にし、場合によっては精神的な不安定さや疾患、社会とのギャップを生じさせるのだ。
では、運動をすることは体や心にどのような影響を及ぼすのだろうか?学習指導要領、高等学校保健体育の「現代社会と健康」には、このような記載がある。「精神疾患の予防と回復には、運動、食事、休養及び睡眠の調和のとれた生活を実践するとともに、心身の不調に気付くことが重要であること。」
また、医学誌には、“運動がうつ病の予防や治療に良い”、“運動することで精神的な健康が向上する”という研究結果が度々登場する。直感的にも科学的にも運動が心に良い影響を及ぼすことは誰もが分かってはいるが、何がどうなって奇跡の様に良いことばかり起こるのかはハッキリしないのが現状だ。運動することで分泌されるホルモンや生化学物質の働きを指摘する声もあるが、具体的に脳に対してどのように働きかけ、うつ病を改善する程の影響を与えているのかまでは解明されていないのだ。
ひきこもりや精神的・社会的な問題。これらを引き起こした原因が人それぞれであるように、乗り越える手段も人それぞれだ。運動すれば立ち所に状況が改善するという訳には行かないだろう。しかし、試しにやってみても悪い点が殆ど無いのが、こういった格闘スクールやジムの良いところだ。女性専用ジムや、バリアフリー、個室など、自分に合うジム、合うジャンルを選べるし、通いはじめも辞めるタイミングも自由だ。もし、運動自体は気に入ったがトレーナーと気が合わないなど不満な所があれば他のジムに移籍するという選択肢もある。目標を達成する前に足が遠のいてしまった場合も「自分が挫折した」というよりは「ジムに魅力がなかった」というのが現在のスタンダードだ。誰でも気軽に通えることが大前提となっている。
ひきこもり等、悩める人のサポートを公表した格闘スクール「KICK BOX」も「続けるためには、まず楽しくなくてはいけない」としている。トレーニング全般にいえることだが、人と比較することは、あまり意味が無く、常に自分との戦いだ。格闘技はそれが顕著に結果として現れる様だ。格闘技はどちらが強いかの比較に思えるが、実はそうではない。試合をするに至るまでは膨大なトレーニングを要する。勿論身体的トレーニングも必要だが、試合に勝つ為には自分の強さと弱さ、両方を紐解き、向き合うことも必要だ。1つでも自分の強みを見つけられれば自信に繋がるし、試合では大きな充実感も得られるだろう。楽しみながら挑戦し、自信をつけるサポートを最大限行っていくという。「KICK BOX」は遠方からでも気軽に受講できる通信講座も用意し、「より多くの人へ、指導を通して強く生きるための極意を広めたい」としている。
KICK BOX
所在地 : 〒144-0022 東京都大田区蒲田5-12-2 バリアビルB1F
事業内容: スポーツジム・キックボクシングジム運営、ムエタイ・古式ムエタイ指導
URL : http://kickbox.jp
格闘スクールがひきこもりや登校拒否を打破する活動を開始 キックボクシング元日本王者が社会復帰に向けて指導
厚生労働省┃身体活動・運動