ダイエット中に気分が落ち込むことはありませんか?頑張っているのに成果が出ない時や、停滞期にマイナス思考になることは誰にでもあることです。しかし、いつもと違う、何か変だと感じたなら気を付けた方が良いかもしれません。今の食事制限があなたに合っておらず、精神的にダメージを受けている可能性があります。
食事とメンタルの関係は“ある”けど“証明困難”
食事と心の関係は“ある”という証拠がいくつかあります。しかし、何を食べればどう影響するのか、その具体的なメカニズムを証明することは困難です。なぜならメンタルヘルスの問題に対する感受性は遺伝や寿命によって微妙に異なり、環境や文化的背景によって影響を受けるからです。とはいえ、ビタミンとミネラルの摂取がADHD(注意欠陥/多動性障害)の子供の攻撃性を低下させるなど(1)食事と心に関わる報告が多数存在していますし、影響を与えていることは明らかです。
食事制限のダメージ
脳は、脂質、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の適切な摂取に依存しています。痩せたい一心で食事を制限することが悪いわけではありません。しかし、必要な栄養素まで過度に制限すると脳の機能(特に認知機能)まで阻害してしまうのです。脳が栄養不足の状態では、途端にストレスと戦うことが困難となります。
また、腸内微生物叢にも精神障害のリスクとの重要な相互作用があると考えられています。(2)脳の発達やストレス軽減に関わる腸内微生物叢は、食事やストレスによって容易く影響を受けてしまいます。ダイエット中のお通じの悪い変化は体からのシグナルかもしれません。腸活はダイエットにも効果的なので、食事制限中も是非意識してみてください。
メンタルに良いダイエット食
メンタルに良いとされるダイエット食は地中海式ダイエットです。2019年1月にU.S. News Revealsのベストダイエットに選ばれた (3)人気ダイエットです。
不均衡な食事は健康状態の悪化のほか心へのダメージと、認知機能の低下がリスクとなる訳ですが、地中海式ダイエットは食べてはいけないものが存在しません。高齢者を対象とした実験で地中海式ダイエットによる認知機能の改善が確認されていること(4)、地中海式の食事内容がうつ病に対するリスクの回避につながること(5)から精神健康を保つ効果があるとされています。
地中海式ダイエットは、「地中海ダイエットピラミッド」下位の食品ほど高い頻度で、上位ほど少ない頻度で摂取するダイエット法です。穀物、野菜やフルーツ、オリーブオイルなどは毎日、魚介類の摂取は少なくとも週2回、鶏肉や卵などは控えめに(目安は週2~3回)、鶏肉以外の肉類やスイーツは特別な日に(目安は月2~3回)摂取し、カロリーの調整と運動をセットで行います。
お気づきかもしれませんが、この食事法って一般的な和食で事足りますよね。献立を考える時に意識するだけで簡単に実行できるかと思います。食事制限の内容を変更したい方は参考にしてみては如何でしょうか。
太っていたら心は満たされるのか?実は真逆!
栄養不足でメンタルにダメージを受けるなら、好きなものをたくさん食べて肥満状態にある人は幸福に満ち溢れているのでしょうか?面白いことに栄養失調状態と同様に肥満状態も気分調節とストレス感受性に関連します。
ストレスと戦うために高脂質な食品が欲しくなりますが、その誘惑に負け続けるとストレス反応ネットワークは活動を減少させ、摂食習慣を強化します。ストレスに対抗する働きを鈍らせてしまう訳です(6)。そうして太ってしまうと、今度は海馬がダメージを受けてしまう可能性があります。実験では肥満環境のげっ歯類で記憶障害や空間認知障害が確認されました(7)。
栄養不足や、食べ過ぎによる肥満に陥った時、ストレスと戦える状態にない可能性があります。もし、ストレスに対抗できない状態なら、何か嫌なことが起これば心はダイレクトに衝撃を受けてしまいます。ダイエットで過度のストレスを感じたり、何か変だと感じたら、食事制限の内容の見直しをオススメします。
3)U.S. News Reveals Best Diets Rankings for 2019
5)Mediterranean diet, stroke, cognitive impairment, and depression: A meta-analysis