首を伸ばして肩を鳴らす、いわゆる“肩ポキ”に関する恐ろしい事件をワシントンポストが2019年5月6日に報じました。肩こりがあるとついついクセになって、肩がダルくなる度に首を伸ばしてしまいますよね。首のストレッチ運動をしていたというアメリカ、オクラホマ州ガスリー在住のジョシュ・ヘイダー氏(28歳)が肩ポキしたのも、何気ない日常的な行動だったのでしょう。しかし、ヘイダー氏は肩ポキが原因で病院に運ばれ、死のリスクに直面したのです。
ヘイダー氏は数週間肩の不快感があったそうで、軽めの首のストレッチを行ったそうです。手を使って首を伸ばすストレッチを行った時、肩が鳴る音を聞いたそうです。その直後、左半身が痺れはじめ1時間も経たない内に全く歩けなくなってしまったのです。なんと、ヘイダー氏は肩ポキで首の主要な動脈の1つである椎骨動脈を破損、脳卒中になってしまったのです。
「彼は亡くなる可能性もありました」こう語ったのはオクラホマ州・マーシー病院のバンス・マコロム医師です。義理の父に連れられ病院へ向かったヘイダー氏は、そのまま救急救命室へ。この時、既に歩行不可能で車椅子で運ばれたそうで、義理の父の話によると「急激に悪化した」状態。CTスキャンの結果、幸いにもヘイダー氏の脳に出血は認められませんでした。血栓を溶かす働きのある組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が投与され一命を取り留めたのです。数日間の治療と数週間のリハビリで簡単な家事や、1歳と5歳の子どもの世話ができる程に回復したそうです。認知能力や言語能力を失うことはありませんでしたが、身体のバランス感覚は失われたままで、左腕のコントロールが困難なこと、右腕と脚の感覚の欠如など、長引く症状が残っています。
ハワイ州ホノルルの脳神経科医、カズマ・ナカガワ氏によると、今回の事件はレアケースで肩ポキをしても99.9パーセント問題ないそうです。しかし、不幸にも0.1%の可能性に当たってしまったヘイダー氏の状況については、さらに悪化する可能性もあるとしています。ヘイダー氏が破損した椎骨動脈は、脳内で結合して脳底動脈となり、脳幹に血液を供給するという重要な役割を果たしています。もし脳底動脈に影響が出た場合、今回の脳卒中は致命的で、昏睡状態になる可能性もあるのだとか。
レアケースではありますが、このような肩ポキや首を伸ばす行為によって脳卒中を引き起こした事件は今回が初めてではありません。2016年2月にはPLAYBOY誌のモデル、ケイティ・メイ氏(34)が急死。ロサンゼルスの検死局の調べによると、原因はカイロプラクティックだったのです。
メイ氏はカイロプラクティックの施術中、指圧療法士が首を曲げた際に左の椎骨動脈を破損。1月30日にTwitterで「撮影中に首をひねってしまって、今朝調整してもらったの。すっごく痛い! 家でできる治療法を知らない?」とツイートし、それから5日後の2月4日に脳卒中で命を落としてしまいました。
可能性が低いとしても、肩ポキは控えるのが賢明ですね。トレーニングやストレッチの時も無理は禁物です。そして何より大事なのは、異変を感じたら直ぐにタクシーに飛び乗って病院へ直行することです。個人的な話ですが、私の家系は脳梗塞のリスクを抱えています。問題が起きたら早く対処する必要があるそうで、医師には「間違っていても良いから、変だと思ったら直ぐに近くの救急病院へ行って!」と言われています。ヘイダー氏が肩ポキから1時間で病院に到着し、一命を取り留めていることを考えると、直ぐに行動できるかどうかが命運を分ける鍵と言えるでしょう。
The Washington Post「A man stretched and popped his neck. He tore an artery and suffered a ‘major stroke.’」