電気刺激により筋肉を動かすことで、筋肉増強効果が期待できるというEMS。近年、ダイエットや筋トレのお供として再ブレイクし、ハンディタイプからベルトタイプ、貼り付けるものまで豊富なジャンルが販売されています。実際に効果はあるのでしょうか?
■ダイエット効果
まずは、EMSの外見的な効果について、アメリカのFDA(食品医薬品局)CDRH(医療機器・放射線保健センター)の見解をご覧下さい。
“これらの機器だけを使っても「6 つに割れた」腹筋はできない。
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20020924.pdf
筋肉に電流を通すことによって筋肉を収縮させることはできる。筋肉を電気で繰り返し刺激することは結果としてある程度筋肉を強化できるかもしれないが、現在知られているデータに基づけば、ダイエットと規則的な運動をしなければ、あなたの外見が大きく変わることはない。 ”
バッサリな内容ですね。元々、EMSはダイエット目的のものではなく、主に医療専門家の指示のもとでリハビリ等に使用されていたものです。勿論、現在でも運動が困難な方の治療やリハビリでの効果が期待されており、研究が進められています。
■筋肉への影響
国民生活センターが2002年に行ったEMSベルトの効果についての調査が科学的根拠もあり、最も分かりやすかったので紹介します。
当時もEMSは人気があり、ベルトを中心にジェルタイプなど多くの種類が販売されていました。これらを使用した1週間後に血液検査とMRIで、筋肉組織への影響をモニターテストした結果、1日2回の使用であっても筋肉に負荷がかかることが確認されました。
更に上腕三頭筋を最大限(各自の限界)の負荷でトレーニングを行った男性6名と、EMSを使用した男性6名で比べてみたところ、筋肉への影響はEMSの方が大きかったそうです。“影響”というのは筋肉組織の細胞破壊等です。電気刺激により筋肉が受ける負荷は思いのほか大きく、筋肉への影響には個人差があるので、使用に際しては注意が必要です。
■筋肉組織の細胞破壊
筋力トレーニングなどで筋肉が増強する場合、医学的には筋肉細胞は壊れた状態から組織の再生を行っていると考えられています。
実験では、EMSの使用により、これと同じ筋肉組織の細胞の破壊や白血球細胞などが組織に浸潤して起こる筋肉の炎症等がみられました。要は筋肉痛になる効果があったという内容です。
筋肉トレーニングとしては良いことのように思えますが、自分でトレーニングするよりも多くの細胞破壊を行っているため、説明書にある使用頻度より長いスパンの回復期間を儲ける必要が感じられます。
■皮膚への影響
EMS機器からは電流が常に一定方向に流れています。長時間使用することで電気分解が起こることがあり、それにより皮膚障害を起こす恐れがあります。実際に国民生活センターには皮膚に関する相談が数多く寄せられたそうです。
“その内容は「5mmの水ぶくれができた」「かぶれた」などの皮膚障害が多かった。
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20020924.pdf
また、半数は買って 1 ヶ月以内に危害を受けており、1 回や 2 回使用しただけで危害を受けたという人もいる。 ”
ちなみに、当時は製造元不明の輸入ものが多かったようです。現在販売されている安全基準を設けた商品についても、長時間の使用は控えましょう。
■選び方
EMS機器を購入する時「安いから」という理由で、怪しいものを選ばないようにしてください。
□製造元がはっきりしているか
□クーリングオフ可能か
□安全基準はあるのか
アメリカの製品についてはFDAの厳しい審査を通過し認可を得た商品が信頼されています。
現在、EMSはその可能性の高さから再ブレイク中です。気軽にどこでも使用でき、トレーニングが難しい部位の筋肉だって動かせます。ただし、全てのトレーニングやダイエットを補える訳ではありませんし、筋肉へのダメージは自分が思う以上に大きいかもしれません。使用頻度や使用時間に気をつけて、上手に活用してくださいね。
参照:
電気刺激による筋肉増強をうたった商品の安全性-EMSベルトの筋肉や皮膚への影響を調べる-
【全文】電気刺激による筋肉増強をうたった商品の安全性-EMSベルトの筋肉や皮膚への影響を調べる-