スポーツジムに真剣に通いだすと気になるのが費用の問題です。区営のスポーツセンターならば1回数百円と割安ですが、毎日通うとなると月額制のジムの方が安上がりだったり…でもずっと通うなら自分に合ったトレーナーが所属するあのジムに…なんて、考え出すとキリがありません。この、習慣的にスポーツジムに通う層のジム費用について、所得税の控除対象にできないか?という提言をまとめた自民党の「明るい社会保障改革研究会」は、これを2019年4月11日に根本匠厚生労働相と世耕弘成経済産業相に提出しました。
ちなみに現在の税金の仕組みについて、国税庁の見解は以下のようになっています。
“メタボリックシンドロームに係る特定健康診査の結果、血糖値と中性脂肪値が高かったことから、特定保健指導(積極的支援)を受けるように指示され、早速、指導を受けました。この指導において、定期的に運動をすべきとのことでしたので、スポーツジムに通うこととしました。
この場合、スポーツジムに支払った運動施設の利用料は、医療費控除の対象となる医療費に該当しますか。 ”
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/70.htm
“運動施設の利用料は、医療費控除の対象となる医療費には該当しません。
特定健康診査を行った医師の指示に基づき行われる特定保健指導(積極的支援により行われるものに限ります。)を受ける人のうち、その特定健康診査の結果が高血圧症、脂質異常症又は糖尿病と同等の状態であると認められる基準に該当する人の状況に応じて一般的に支出される水準の医師による診療又は治療の対価は、医療費控除の対象とされます(所得税法施行規則第40条の3第1項第2号)。
しかしながら、運動施設の利用料は、医療費控除の対象となる特定保健指導そのものの対価ではありませんし、医師の診療等を受けるために直接必要な費用にも該当しませんから、医療費控除の対象となる医療費には該当しません。 ”
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/70.htm
これに対し、「明るい社会保障改革研究会」が提言した内容は、予防・健康づくりを年金、医療、介護、子育てに並ぶ社会保障の第五分野に位置づけませんか?というものです。習慣的にスポーツジムに通うことは、健康づくりや病気予防になり、結果として健康寿命が伸びれば社会保険料を支払う就労者も増加するという考えの基構成されています。
実はこの提言、ジム費が控除対象になるというお得な面だけではなく、経済効果への期待も孕んでいます。
政府が正式に習慣的にスポーツジムに通う等の予防・健康づくりを促進することで、予防関連のビジネスが広がる可能性がある為です。健康づくりの側面で比較的新しい国の取り組みには、消費者庁が定める「特定保健用食品(トクホ)」があります。法制化されたことで、多くの企業がトクホドリンクや食品を販売。現在では自動販売機でも気軽に購入できるほどに定着しています。
同提言の中には、ウエアブル機器(身に着けたまま使える端末)について触れられていて、医療機器とは別に健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められた機器について認証制度をつくるなどして、その機器の購入費用も所得控除の対象としたらどうかという内容も含まれていました。もし、このような新制度ができたとして、Apple Watch(アップルウォッチ)が科学的に健康維持に役立つと証明されたとしたら、アップルウォッチ購入費用も所得控除できるということです。
この他、投資や企業の保険組合などについてなどにも触れられていて、政府が夏に定める経済財政運営の基本方針への反映を目指していく見通しです。
しかし分からないのは「明るい社会保障改革研究会」とは何なのか?ということです。このニュースで話題になるまで名前すら聞いた事がなかった方も少なくないかと思います。「明るい社会保障改革研究会」は自民党の加藤勝信総務会長や世耕弘也経済産業相らでつくる自民党の勉強会で、会長は上野賢一郎財務副大臣です。個人の幸せ(個人の健康増進)、経済社会の持続可能性、成長戦略の3つを同時に目指すことが当面の検討内容となっているそうです。
現時点でも何とかジム費用を控除対象にしようとする方は存在するようで、様々なサイトでその方法が紹介されていますが、上記のとおり“難しい”というのが現状です。お得にスポーツジムに通いたい!そんな誰もが持つ要望が実現するのかどうか…今後の展開に期待していきたいですね!
参照:
国税庁┃特定保健指導に基づく運動施設の利用料
「健康投資」で所得税控除 自民勉強会が提言 社会保障の担い手増やす
スポーツジム費、控除対象に=自民勉強会が提言